「恋人がいない自分は、なんだか出遅れている気がする」。そんなふうに感じて、少し胸がざわつくことはありませんか。SNSを開けば楽しそうな二人組が流れてきて、自分だけが取り残されたような気持ちになる。でも、その引け目は、あなたの魅力とは関係ありません。この記事では、そのモヤモヤを一緒に、できるだけ正直に眺めてみます。
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「恋人がいる=リア充」は、いつのまにか形が変わりました
ひと昔前の恋愛は、いろいろな役割が一人の相手にまとまっていました。気を許せる相手であると同時に、暮らしを回すための相棒でもある。ついでに、周りに見せられる世間体も兼ねていました。家事も生活も一人では回しきれず、昔はそうするしかなかったのです。
だから「恋人がいる」ことには、それだけで大きな意味がありました。生きることと、ほとんど直結していた。
ところが時代が、その「全部入りの束」を、少しずつバラ売りにしていきました。心の安心は気の合う友達で足り、退屈をしのぐものは見きれないほどある。便利さが、恋人を「いなくても困らないもの」へと静かに変えていったのです。
つまり今は、恋人がいなくても、暮らしはちゃんと回ります。いれば嬉しい、でもなくても困らない。だから、恋人がいないことを恥じる必要は、どこにもありません。
数字も、「あなたが遅れている」とは言っていません
このことは、統計にもあらわれています。
婚姻件数は1972年の約110万組をピークに、2023年には約47万組。ピーク時の半分以下です(厚生労働省「人口動態統計」)。ただ、これは「みんなが結婚したがらなくなった」という話とは少し違います。1972年は第一次ベビーブーム世代(いわゆる団塊の世代)が結婚適齢期を迎えた頃で、そもそも若い人の数が今よりずっと多かった。件数が減ったのは、あなたの努力や魅力ではなく、人口の形そのものが変わったからです。それでも今なお、1日あたりおよそ1,300組が結婚しています。
一度も結婚しない人も、珍しくなくなりました。「50歳時未婚割合」(いわゆる生涯未婚率)は、男性でおよそ28%、3.5人に1人ほどです(国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」2023年改訂版、原データは2020年の国勢調査)。
ただ、この数字は少し丁寧に読む必要があります。これは「一生結婚できない人の割合」ではありません。50歳時点で未婚の人を数えたもので、その後に結婚する人は含まれず、籍を入れていないだけのカップルも「未婚」に数えられます。裏を返せば、50歳の時点でも、男性の約7割はこれまでに結婚を経験しているということです。
数字が伝えているのは、あなたの出遅れではありません。結婚のタイミングや形が、それだけ多様になったということです。
ひとりで生きることも、対等な正解です
ひとりで生きると決めるのは、立派な選択です。自由には自由のよさがあって、やせ我慢でも言い訳でもありません。むしろ、ひとりだからこそ手に入るものがあります。自分の人生の主導権を、最後まで誰にも渡さずにいられること。大きな決断も、日々の過ごし方も、誰かの都合とすり合わせず、自分だけで決められる。時間も選択も、まるごと自分のものにできます。
自分の物語を、自分だけで書き切れることも、ひとりの人生の確かな強みです。誰かと分け合わなくても、好きなことに時間を注いで、身軽なまま歩いていける。振り返ったときに「自分で選んで、自分で生ききった」と言える人生は、それだけで満ちています。
だからこの記事は、恋愛や結婚を勧めるものではありません。「早く相手を見つけなきゃ」と急かすつもりも、まったくありません。ひとりを選んで、そのまま気持ちよく生ききる人生を、対等なものとして応援しています。
それでも、束にしないと手に入らないものもある
そのうえで、押しつけではなく、ひとつの見方として置いておきたい話もあります。勧めるわけでも止めるわけでもなく、こういうものもあるよ、と机に並べてみるだけです。
バラ売りでほとんどのものが手に入る時代でも、単品では買いにくいものが少しだけあります。そのひとつが、「誰かにとって、取り替えのきかない一番になること」。友達には友達にしか渡せないものがあり、恋人という関係には、また別の性質のものがあります。何人と仲が良くても、友達があなたを「一番」に置かないのは、友情が薄いからではなく、種類が違うからです。「あなたが一番だ」という感覚だけは、気の合う相手をどれだけ増やしても、なかなか代わりがききません。
もうひとつは、ひとつの人生を、誰かと一緒に書いていくこと。熱を出した夜に黙って隣にいてくれる誰か、なんでもない一日を一緒に覚えていてくれる相手。少しだけ自由を分け合い、一人の相手に時間を積んで、はじめて育つものです。
面白いのは、こうしたものが「今すぐには要らなく見える」ことです。今が楽しいなら、その感覚は正しい。ただ取り替えのきかない一番は、時間をかけた分だけ、ゆっくり育つ種類のものではあります。木を植えるのに似ていて、早い遅いは関係なく、植えたその時から育ちはじめる。欲しいと思ったときに、その時から育てはじめれば十分です。いつか欲しくなるかもしれないし、欲しくならないまま生きるかもしれない。そのどちらも、まったく同じだけ正解です。「今は要らない」も「一生要らない」も、誰かに引け目を感じる筋合いのものではありません。
確実な見返りではなく、それでも賭ける価値のあるもの
とはいえ、正直に言っておきたいこともあります。誰かと関係を築こうとしても、うまくいくとは限りません。
よく「離婚は3組に1組」と言われます。これは、ある年の離婚件数を、同じ年の婚姻件数で割った数字です(2024年で約38%、厚生労働省「人口動態統計」令和6年確定数)。気をつけたいのは、これは「結婚した夫婦の3組に1組が別れる」という意味ではなく、同じ年の件数を並べただけの割合だということ。実際に一組一組が生涯で別れる確率とは、別の指標です。
裏を返せば、この数字は「3組のうち、およそ2組は続いている」とも読めます。焦って急ぐ必要はありませんし、実際、多くの関係は続いています。手をかけ続けた関係が、後からじんわり効いてくる。確実な見返りが約束されるわけではないけれど、だからこそ、時間をかける価値もあるのだと思います。
急がなくていい。ただ、自分の意思で選べたら
もし将来、誰かとの関係を持ちたいと思ったとき、心のすみに置いておいてもらえたら、と思うことがあります。長い関係を短い物差しで測ろうとすると、たいてい後で戸惑う気がします。顔立ちや、出会った最初の盛り上がりは、どうしても短期の目盛り。長く一緒にいられるかを決めるのは、困ったときに相手がどう向き合うか、弱ったあなたに優しくいられるか、といった地味なところです。そうした「見る目」も、遠回りやうまくいかない経験を通して、ゆっくり育つのだと思います。
伝えたいことは、たったひとつだけ。古い物差しに流されるのでも、なんとなくの惰性でもなく、自分の意思で選べたらいいな、ということです。ひとりを選ぶのも、誰かと歩くのも、あなたが決めたなら、どちらも正解。もし今日、少しだけ動いてみたい気持ちがあるなら、気になる人をご飯に誘ってみるくらいの小さな一歩で十分です。断られても大丈夫。それも、見る目が育つ一歩になります。
それでも、うまく言葉にならないときは
ここまで読んで、「頭では分かるけれど、気持ちが追いつかない」と感じても、それで大丈夫です。焦りや引け目は、理屈だけで消えるものではありません。
こっそりカフェは、そんな気持ちを匿名で、無料で話せる場所です。答えを出したり、こうしなさいと導いたりするためではなく、ただ、あなたの話を聞くために、学生の相談員がいます。すぐにお返事できないこともありますが、言葉にしてみたくなったときに、そっと開いてもらえたらと思います。うまくまとまっていなくても、「なんとなくモヤモヤする」だけでも大丈夫です。
もし、いますぐ誰かに助けてほしい、つらくて限界だ、というときは、よりそいホットライン(0120-279-338、24時間・無料)など、すぐに話せる窓口も遠慮なく頼ってください。


