男性の育児休業取得率、40.5%。令和6年度、初めて4割を超えました。ただ、この数字だけ見て、何かが変わったと思うのは、まだ早いかもしれません。
取得率という数字は、「取ったか、取らなかったか」を数えます。取れば1、取らなければ0。いわば「点」の数字です。その奥に、もうひとつ別の数字があります。「どれくらいの長さ取ったか」。こちらは「深さ」の数字。今日はこの2つを、順番に眺めていきます。
40.5%は、こう数えられた数字です
出どころは、厚生労働省の「令和6年度雇用均等基本調査」です。事業所への調査で、令和4年10月1日から令和5年9月30日までのあいだに配偶者が出産した男性のうち、育児休業を取った人の割合。それが40.5%でした。
分母をもう一歩確かめておくと、事業所を通した調査なので、対象になるのは雇われて働いている男性です。自営業やフリーランスは、この数字の外にいます。答えているのも、働く人本人というより事業所の側。「日本の男性全体の4割が育休を取った」と読むと、実際の範囲より広がってみえます。
ちなみに女性の取得率は86.6%で、前回の84.1%からゆるやかに上昇。男性の前回は30.1%でしたから、こちらは1年で10.4ポイントの急な伸びです。男女の差は、依然として大きいままです。急に伸びた分、その中身が気になります。伸びた点の内側を、もう少しのぞいてみます。
一年で、10.4ポイント
30.1%から40.5%へ。取得率としては過去最高の数字です。
なぜこの1年でこれほど伸びたのか。制度の浸透か、職場の空気の変化か、いろいろ思い浮かびますが、この調査から理由は読み取れません。分かっているのは、点が急に増えたという事実だけです。
たとえば、職場で10人の男性に赤ちゃんが生まれたとします。前回の数字なら、育休を取ったのは3人。今回なら4人。1年で、ひとり増えた計算。数えやすい分、印象にも残りやすい数字です。ニュースの見出しになりやすいのも、この点の数字のほうです。取得率の伸びだけを見ていると、育休はいっきに"当たり前"になったように見えます。深さの数字がどう動いているかは、まだ先で確かめます。
産後パパ育休という、新しい入り口
内訳も見ておきます。育休を取った男性のうち、産後パパ育休(出生時育児休業)を取った人は60.6%。名前のとおり、子どもの出生直後の時期に焦点を当てた休み方が、いまや男性育休の入り口の6割を占めています。産後パパ育休は、通常の育児休業とは別枠で新設された、出生直後の時期に絞った制度です。期間が短く区切られている分、申請のハードルが下がった、という見立ても成り立ちます。理由そのものについては、この調査結果の外側にあります。
新しい入り口から入る人が、すでに多数派になっている。点の数字を眺めるとき、頭の片隅に置いておきたい事実です。
「取った」と「どれくらい取ったか」は、別の質問です
ここからが本題です。
40.5%という取得率は、「取ったか」という質問への答えです。ただ、「どれくらい取ったか」という質問には、まだ何も答えていません。点をいくつ打っても、それぞれの点がどこまで深く沈んだかは、別に測る必要があります。
そして深さの数字は、点の数字ほど華やかな動き方をしていません。深さの数字は、簡単には切り取れない形をしています。グラフの角度も、ゆるやかです。
2週間という長さについて
取得期間のデータは、ひとつ前の令和5年度調査のものです(取得率の40.5%は令和6年度。年度がひとつずれるので、同じ時点の話として混ぜるのは避けたいところです)。
令和5年度、男性の育休期間は「5日未満」が15.7%、「5日〜2週間未満」が22.0%。合わせて37.7%、およそ4割が2週間未満でした。
過去と比べると、変化の向きは見えてきます。平成27年度は「5日未満」だけで56.9%、2週間未満の合計は74.7%。令和3年度は合計51.5%。そして令和5年度が37.7%。深さの数字も、確かに深くなる方向へ動いてきました。
それでも、いまなお4割近くが2週間未満。なぜ期間が短いままなのかについても、この資料だけでは理由は分かりません。
もうひとつ。政府は「こども未来戦略方針」で、男性育休の取得率を2025年までに50%、2030年までに85%へ引き上げる目標を掲げています。数字だけ聞くと壮大ですが、この目標が指しているのは取得率、つまり点のほうであって、期間という深さの目標ではありません。仮に50%に届いた年が来ても、深さの問いはそのまま残ります。それは点の目標が果たされたという話にとどまります。深さの目標は、いまのところこの資料の外側にあります。二つの数字は、並べて見て初めて、伸びの全体像に近づきます。
まだ、伸びている途中の数字
背景として、もう少し広い数字にも触れておきます。6歳未満の子がいるかどうかを問わず社会全体でみると、家事関連時間の男女差は2001年の3時間3分から2021年には2時間33分へ、30分縮まりました(総務省「令和3年社会生活基本調査」)。育休の調査とは別の調査で、時点も違いますが、家庭の中の時間の偏りが20年かけて動いてきたことは見て取れます。それでも、20年という長さそのものは、家庭の中の時間配分が簡単には動かない大きさを、物語っています。
(この「30分」を大きいと読むか小さいと読むか、書きながらしばらく手が止まりました。20年で30分、1年あたりに直すと1分半。……と割り算を始めるとどんどん渋い顔になるので、話を戻します。)
動画「男性育休40.5% でも家の秤は傾いたまま(こっそりカフェ公式)」でも、家事や育児に使われている時間という、この記事とは別の切り口で数字のお話をしています。深さの側をもう覗きたくなった方は、そちらもどうぞ。
さて、まとめます。40.5%は、過去最高まで増えた点。37.7%という2週間未満の割合は、まだ下がっている途中の深さ。どちらも動いている最中の数字で、祝うにも嘆くにも早い段階にあります。急いで採点をつけたくなる気持ちも分かりますが、いま出せるのは経過報告までです。
ひとつだけ持ち帰るなら、数字を見るときに「取ったか」と「どれくらいか」を分けて眺めること。点の増加だけで語られる話に出会ったら、深さのほうはどうだろう、と一呼吸置いてみる。それだけで、40.5%の見え方はずいぶん変わります。数字は毎年更新されていきます。次の調査で、点と深さがどちらもどう動くか、気にかけておく価値はありそうです。
点と深さのあいだの気持ちは、ここで
点の数字は増えているのに、自分の家の深さの部分がずっと引っかかったまま、という人もいるはずです。こっそりカフェは、そんな気持ちを匿名で、無料で話せる場所です。(叱ったり、こうしなさいと導いたりするためではなく、)ただ、あなたの話を聞くために、学生の相談員がいます。すぐにお返事できないこともありますが、言葉にしてみたくなったときに、そっと開いてもらえたらと思います。うまくまとまっていなくても、「数字は増えているらしいのに、うちの実感が追いついていない」だけでも大丈夫です。
もし、いますぐ誰かに助けてほしい、つらくて限界だ、というときは、よりそいホットライン(0120-279-338、24時間・無料)など、すぐに話せる窓口も遠慮なく頼ってください。




